書籍・雑誌

2019年1月22日 (火)

The Last Girl

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 ナディア・ムラド著「The Last Girl、私を最後にするために」(東洋館出版社)を読んだ。著者は21歳の学生で、2018年ノーベル平和賞を受賞した。戦争の性暴力を根絶する活動家である。

 イラク北部に住んでいたが、イスラム(ISIS)に襲撃され性奴隷となったが、運よく逃亡でき助けられた。その事実が述べられる衝撃的な内容である。

 第1部は襲撃される前のコーチョという村の生活、第2部はイスラムによる襲撃と戦闘員によるレイプによる囚われ、第3部は戦闘員からの逃亡の3部からなる。

 ナディアは11人兄弟の末子であり、襲撃から運よく逃亡できた。この世界でこのような体験は私を最後にするという活動をしている。

2018年12月20日 (木)

和の行事えほん

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 高野紀子作の「和の行事えほん」は1年中の行事が「1春と夏の巻」と「2秋と冬の巻」の2巻に忘れかけている行事が説明されている。

 小さいころ親に教わった行事が今となって省略されつつある。

 12月の「年越し」はもともと正月をむかえる準備をすることを云ったが、今では年末の夜から新年の夜明けにかけてすごすことを呼んでいる。

 新しい年の神さまを迎えるために家中すみずみまできれいに掃除し、きよめる「すすはらい」、そして正月用の食品を売る市「年の市」などの言葉も懐かしい。

 大晦日の夜を除夜とよび、人間の煩悩の数108つの鐘をついて新しい年を迎える「除夜の鐘」、大晦日の夜に「年越しそば」を食べて長いそばにちなんで長寿を願う。

 1年の最初の日、1月1日は「元日」、「元旦」は元日の朝をいう。「鏡餅」は年神さまにそなえるおもちで、神様がやどるとされていた鏡のように丸いおもちをそなえる。11日の鏡開きまでそなえる。

 「屠蘇」は正月に飲む薬酒で長寿になると云われた。

 などの言葉が絵と一緒に説明されている。

2018年12月 3日 (月)

イデアの影

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 本のタイトルに似合わなく不思議な本だった。読みやすいので一気に読め、何か自分の身辺に近く寄ってる感じもした。

 こじんまりした会社経営者と年離れた若く美しい奥さんの話である。家政婦ヤハギさんと三人で住んでいる。主人は奥さんに厳しい態度であった。イングリッシュガーデンのような広い庭のある家である。彼女と接する人が次々に亡くなるが、決して気持ち悪くなく自然に時が過ぎる。

 最初の人は会社の若い男性で英語を教えてもらうハセガワさん。英語の教えとクラシックのレコードを借りたり、庭の薔薇の香りを一緒に楽しんだ。ある日、彼が浴槽で死んだ。フィアンセに結婚を断られた後のことだった。

 主人の従妹が大学受験のためススムくんがしばらく一緒に住まうことになり、この家は若返る。

 主人と接している政治家タカヤナギ先生が主人の出張中に訪れる。先生とは舞踏会で会った人であり、彼女に関係を欲して訪れ、もみ合いになったところにススムくんが助けに入る。先生は床にたおれそのまま息を引く。ススムくんも薔薇のある庭で首をつって死んだ。

 彼女はその後、体調が悪くなって修道院であった静かな療養所に移る。院長先生が彼女の主治医になる。そこでハーモニカを吹く少年を知るが療養所の誰も知らないという。まぼろしのハーモニカ少年がこの後いくつかの場面に登場するが、彼女のもうろうとした心が後半のテーマでもある。

 季節を見送りながら、主人が療養所に迎えに来て家に戻ることになる。家政婦ヤハギさんは亡くなって若いシミズさんに代わっていた。主人はその三日後に亡くなる。再び彼女は療養所に戻って過去の事件について回想にふけって終わる。

 作者は元名古屋大学に勤めた60歳すぎ工学博士である。四章からなるが各章冒頭に細雪から引用した文が出る。心地よい文であった。

2018年10月21日 (日)

わが心のジェニファー

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 浅田治郎著「わが心のジェニファー」(小学館)が面白い。

 主人公ラリーは生粋のニューヨカーである。ラリーの彼女ジェニファー(ジェニー)はたいそうな日本びいきである。彼女にプロポーズしようとしたら、まず日本を見てきてほしいと云われ、旅先から感じたままの手紙を要求された。

 休暇をとって携帯とPCを持たず、2冊の日本ガイド書を手にして2週間あまり旅をする。

 最初、日本の航空会社の機内のことから始まる。日本のすばらしさを感じる本である。旅する新宿、新幹線、旅館、日本料理、京都、温泉、大阪、別府など、これまで感じなかった日本の特徴が述べられる。また、京都で会った彼女「マコト」や、温泉を旅する外人「スパーマン」とのつきあい、地下街で上流階級の少年「ジョージ」と母親との出会いなども面白い。

 最後、北海道でみる番いの丹頂鶴のダンスを手紙に書いて「僕と結婚してください」と云って終わる。

 日本人作家の本であるので、終には少し飽きっぽくなるが日本人である幸せを感じた。

2018年8月 7日 (火)

水曜日の凱歌

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「水曜日の凱歌」乃南アサ著新潮社刊を読んだ。第二次世界大戦終戦後の日本の社会状況をテーマした小説であり、その頃の状況が少し記憶にあるので興味あった。

7人の家族であったが一番下の鈴子と母の終戦後の生活である。昭和20年3月に東京大空襲で大都会が焼け野原になり隅田川の悲惨な風景がある。8月6日には広島に原子爆弾が、続いて長崎にも落とされてついに8月15日敗戦終戦となる。

終戦となって米国進駐軍が日本に来ることになった。駐屯軍の慰安をする特殊慰安施設協会が(RAA)設立されて、それにまつわる生活がストーリーの中心だ。いわゆる売春で当時パンパンと呼ばれてた。18歳から25歳の女子約5千人が募集された。空襲にあわなかった熱海がその舞台である。母は英語が少しできるということで、RAA運営に関連した仕事で生活する。本人はその上級将校の付き合いで異次元の生活をする。箱根は上級将校の集まる街であり、銀座にはPXという進駐軍用の店があって何でも手に入ったそうだ。

街には孤児、浮浪者などがあふれひどい社会であったが、RAAにかかわる人はまずまずの生活ができる社会であった。年末に開催されるNHKの紅白生中継がその年に放送された。タレントの金語楼、エノケン、ディックミネ、古川ロッパ、水の江瀧子、淡谷のり子らの名前が懐かしい。

日本新円の切り換えもあった。翌年には慰安施設のオフリミットがあってストーリーが終わる。

慰安婦は進駐軍兵による婦女への暴行を未然に防ぐ政府の対策であることを改めて知った。韓国ではその罪をいまだに引いている大きな問題だ。敗戦によって日本は大混乱するが73年でよく立ち直れたと思う。

2017年3月 8日 (水)

えんとつ町のプペル

岐阜市図書館で借りた。昨年秋に刊行された人気の絵本である。製作に4年半を費やしたという。

ゴミ人間であるプペルとえんとつ掃除のルビッチの物語である。ルビッチは漁師の子であるが父は波にのまれて死んでしまい、えんとつ掃除夫になった。

プペルとはハロウインのとき知り合った。

プペルはルビッチの父の船に風船をつけて、2人で乗って星を観に行った。えんとつからただよう煙多い街で星は見れないが、父から星の美しさを聞いていた。

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ルビッチはただ一つしかない父親の写真が入った大事な銀色のペンダントを煙突掃除中に亡くしてしまった。

船はけむりを抜けて美しい星の世界に入っていった。

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写真の入ったペンダントはプペルの傘についていた。星も見れたしプペルに感謝していたがプペルは父親であったそうだ。

街は千と千尋の神隠しの情景や四日市を思い出せる。ネットで無料公開している。

2013年3月21日 (木)

リポ蛋白(a)

血液中のコレステロールはよく聞く成分である。LDLコレステロールやHDLコレステロールという成分も耳に慣れてきた。

LDLやHDLが「リポ蛋白」である。血液に溶けないコレステロールなどの脂質をこのリポ蛋白に乗っけて体の中を運搬する。

さて、リポ蛋白の1種である「リポ蛋白(a)」(略してLp(a))は1963年スェーデンの遺伝学者が発見して50年になる。日本において恩師川出先生が初めて手がけられて30年経過した。

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インスブルグで半年にわたってお世話になったウッタマン(Utermann)博士が50年を記念して25ページにおよぶ総説を書いた。

Lp(a)はLDLにアポ蛋白(a)(Apo(a))をもつユニークな構造である。

Apo(a)は血液線溶因子であるプラスミノゲンと類似した構造(クリングル, kringle)をもつ。その数は人により異なる(Kringle repeat)。この構造が血液線溶因子と競合して脳梗塞などのリスクを発生させる。

図中、黄色コアにアポ蛋白B(ApoB)をつけたのがLDLで時に悪者になる。最近、Lp(a)は酸化LDLの性質をもつと研究されて大悪者と思われる。

今でこそ、すっかり研究の熱はさめてしまったが、なお謎は残ったままである。

血清中の成分量はほぼ0.1から、100mg/dlという1000倍もの濃度幅で分布する。最も多い濃度は約10mg/dlである。高濃度な人ほど動脈硬化症などの病気になるリスクが高いことが解っている。

進化したサルと人にのみ存在する。体内でビタミンCを合成できない種属にのみあるとされ、組織の修復に役だっているとも考えられている。

担当した「臨床検査ガイド2013-2014」(文光堂)が3月に発刊されたのを期して書き留めた。

引用文献

Angelin B. J Intern Med, 273, 3-5, 2013(図を引用した)

Kronenberg F,et al. J Intern Med, 273, 6-30, 2013

2013年1月15日 (火)

舟を編む

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三浦しをんの「舟を編む」(光文社)を岐阜市図書館で借りて読んだ。2012年の本屋大賞を受賞した人気本だけあって、3ケ月近く待った。神保町にある500人程の出版社で、「大渡海」という国語辞典を編纂して出版するに至るまでのドラマである。

「大渡海」は言葉の大海原を航海するための船という意から名付けられ、その編纂作業を「舟を編む」としている。イキなタイトルである。

国語辞典は膨大なお金と時間を費やす。実に企画から出版まで15年かかった。企画は荒木と外部監修の松本先生で始まった。荒木は出版直前に定年になって嘱託社員になる。フットワークの軽い西岡と契約女性社員の佐々木が加わり、さらに主人公の入社間もない馬締(まじめ)が営業部から配属になる。後半に社内女性ファッション紙部署から岸辺が配属される。

まじめは元の学生下宿から通勤しており変人扱いされていた。下宿大家の孫娘で、湯島の「梅の実」で板前修行中の香具矢と結婚する。まじめと香具矢の恋は、漢詩調のラブレターを出して理解されず、また後楽園遊園地でデートするがメリーゴーランドや観覧車に乗るがキスもしない。猫のトラが二人の恋をまとめたようだ。香具矢は神楽坂に割烹「月の裏」という店を営むようになる。

西岡については香具矢に気を寄せるが、最終的にブス女性麗美と深くなる情景が描かれている。

辞典はめでたく出版される。まじめの細かな心配りと真面目さが成功に結びついた。しかし、出版直前の4校目になって大事な語句「血潮・血汐」が抜けていることに気付き、編集スタッフは1か月間合宿して期限に間に合わせる。監修の松本先生は残念なことに出版を見ず食道癌で他界する。松本先生の具合が悪くなった時期スタッフたちの描写に感銘した。

辞典の編纂はまず「用例採集カード」に日常に気づいた用語を書き留めていく。辞典中のいろいろな語句が無理なく説明されている。辞典の用紙に薄く、ぬめり感のある、裏写りしない究極の紙が特別に開発された。プライドの高い外部原稿依頼者とのやりとりの難しさも描かれている。

4月に映画化される。香具矢を宮崎あおいが演じるが、辞典の地味な編纂作業、登場人物の繊細な描写に期待したい。

2011年8月19日 (金)

下町ロケット

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8月21日直木賞受賞が決まった「下町ロケット」(池井戸 潤、小学館刊)を読んだ。

ロケット部品の水素エンジンの燃料供給バルブの先端技術を開発し、同種の大企業にエンジンを供給して種子島からロケットを発射成功するまでの下町製作所社長の苦難な物語である。

下町会社の社長佃は元宇宙科学開発機構の研究員であった。大学時代の研究員と結婚したが、仕事のことで妻は離婚し出る。家庭は一人娘と母との暮らしになる。父の製作所を受けついだ。開発した水素エンジンと燃料供給バルブの技術は高度であった。しかし会社運営に必要な資金融資には理解されなく、またその技術を買ってくれる会社は甘くなく苦しむ。

外国企業からの買収、技術特許のいざこざ、社員と自分の夢の違いなどが物語られる。このエンジンは将来車やそのバルブ技術は人工心臓にも応用可能だそうだ。

最終的には製品の品質と会社のプライドをつらぬいて成功することになる。また、そこに行きつく、いろんな人とのつながりが大事であることが納得される。

図書館から借りたが、400ページもあるが興味ぶかく速く読めた。21日からWOWOでもドラマ放送が始まる。

著者は岐阜県生まれ、銀行員を退職して作家になった。かって江戸川乱歩賞を取っている。さすが読みやすかった。登場人物が50人近く出てくるのでメモして読んだ。